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田園調布 迎賓館 - 造園中・造園後編 -

  • 執筆者の写真: 江夏 大三郎
    江夏 大三郎
  • 3月31日
  • 読了時間: 5分

更新日:4月5日


まずは準備工事です。前述の通り準備工事は当方で修業した東京の弟子たちが行いました。不要な樹木類につ いては伐採及び抜根を、活かすものについては剪定を行い形を整えました。ウッドデッキとプールのあった庭は、ウッドデッキを撤去すると、複雑に鉄骨は入り組み、また電気の配線や給排水の配管も多数存在していたので、選別を行い整理し撤去工事を行いました。その上で最下層を砕石を敷き込み排水層とし、上部には不織布の透水シートを敷きました。不織布のシートの上には50から100cmの客土を行いました。これにより植物の生育する基盤を整えました。図面を作成する段階では想像もしていなかったコンクリートの構造物が多数発見されたり、底面の不規則な凸凹があったりと、それらをうまく処理してもらいました。東京の弟子たちの準備工事のおかげで我々が滞りなく作業を進めることができました。大変感謝しており ます。




我々が東京入りしたのは2月初め、まだまだ寒い時期でした。石材については京都では東京で用いる石材のピックアップ及び梱包作業、灯籠や石材加工の依頼など多岐に渡る準備作業を行い、20tを超える石材を東京へ輸送しました。搬入した石材は堆く積み上げられ、それぞれ庭の各部へ適切に配置されるのを待ちました。




まず最初に手をつけたのは庭の中心となる池護岸の石の据付です。そこから池の上流の滝の石組みと、各所の景石を据付けてお庭の骨格を決定して行きました。母屋から池の庭に下りる高低差のある部分については、階段を二箇所施工しました。それぞれに趣向を凝らした設計となっており、片方は古材の切石の階段石を据え、踏面をチャートの砕石で畳みまし た。そしてもう片方は丹波石の表面が風化した、いわゆる餅肌石を階段石に用い踏面を滋賀の安曇川の川石で隙間を畳み込みました。ともに特徴の出た階段となりゲストの目を楽し ませてくれるものとなるでしょう。 




池には古材の葛石を二列にリズミカルに並べ橋を掛け、八ツ橋としました。庭園内のメイ ンの園路とは別に石橋を設けることで、景色の見え方が多様化し、ゲストの目を楽しませることでしょう。また八ツ橋自体も景観として素晴らしく、この庭を眺める上で大きなポイントとなっています。池は枯れ池で中は白川砂利敷とし、中程にガラスのオブジェが鎮座します。





園路の途中には本格的な茶事にも対応できる蹲居を設置しました。橋石の古材をくり抜いたものを水鉢に用い、こぢんまりとはしているものの、風情のある蹲居が完成しました。他に園路の途中には岩清水八幡宮に本歌がある灯籠の模刻したものを建てました。このような灯籠を彫ることのできる石工は現在では数少ないと思います。池の周りを取り囲むようにモミジを中心とした植栽を施し、四季を通して庭を見る人の目を楽しませてくれることでしょう。





サンルーム前の庭には中心に先ほどの灯籠と同じ職人作の西ノ屋形の灯篭を建てています。そして手前を横切る長い延段は安曇川ゴロタの石畳で仕上げています。地模様の曲線との調和によりどの角度から眺めても、美しい仕上がりとなっています。植栽は、やはりモミジを主体としたものですが、他にダンコウバイやもともとあったシャクナゲやヒメシャラも随所に配置されており、細長いお庭に華を添えています。灯籠周りにはカンチクを植栽しており、カンチクの植え込みの中に美しくすっと立つ灯籠を鑑賞していただけます。




ガレージ横の庭園は開放感のある広い芝庭としました。手前には張石の延段を設置し、そ こからお庭を眺めやすいようにしています。このお庭はコの字に板塀で囲い、植栽は二箇所 に枝垂れ桜を植栽しており、春には芝生に毛氈を敷いて花見などを楽しめるよう想定しております。山採りで自然樹形の赤松と形の良い五葉松もこのお庭の大切なスパイスとなっています。広い芝生と樹木類の植栽部分は木曽石で区切り、すっきりとした印象を持っています。またこちらの庭にも柚ノ木形の灯籠を建てており、景色の中心となっています。古式

の灯籠の模刻ですが、広い空間の中に据えるとモダンにも感じます。この迎賓館のお庭の大部分は杉苔を植栽しております。京都とは大きく気候が異なり、苔にとっては生育環境が悪いことが想定されますので、土壌改良ののち苔を植栽したのはもちろん、散水設備についても苔に適したものを選定し、施工を依頼しました。これから杉苔だけでなく様々な苔の胞子が飛んできてここに根付き、杉苔との競演を見せてくれることを期待します。





この迎賓館のゲストは日中だけとは限りません。夜もまた違った見せ方を期待し、電気工 事業者に庭園灯の設置を依頼しました。夜も幻想的なお庭を楽しんでいただけるでしょう。 出来上がってみると見どころはたくさんあるものの、控えめで各要素の個性の調和がうまくいったお庭に仕上がりました。




材料に関しては京都とその近郊の産地のものを多用して、 施主が求められていた京都風の庭づくりになっているものと自負しております。大変な面もたくさんありましたが、我々の持つ技術を遺憾なく発揮できた良い機会となりました。




施主はじめこの庭づくりには、造園前から完成までたくさんの方々のお力添えをいただき大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。



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